【第4話】木材の可能性

僕は自分がかつてイベント業を始めたころ機材はほぼ全部木製で自己製作していた事や、工場や作業場も自分で作成していたので、木材の加工のしやすさや保存性の高さへの実感が培われていた。

西洋では石材を、近代文明では金属材を重んずる。

しかし日本の木材は日本人の知恵や技術と結び付く事でこれらを超える可能性を持った素材だと僕は思っている。

「Fさん。現在イベントでの見える構造物はほぼ100%金属です。でも木にしかない良さがあると思うのです。僕はアルミトラスと言う構造材を長年扱っています。この機材が持つ良い点を引き継ぎながら木材の可能性を追求しましょうよ。」

長きにわたって心にあった想いが言葉になった。

F氏がゆっくりとして口調で返事をくれた。

「渕さん。木のトラス。やりましょう。」

F氏の目の奥が黒々と輝いていた。F氏の情熱はどこから来ていたのかが分かった。F氏の持つ長年の経験が裏打ちする木材への信頼から湧いて来ていたと。

こうして周囲の山は紅葉する平成最後の秋に木製トラスの開発が始まった。

【我々の本拠地千葉市若葉区:秋の様子】