【第3話】木材業界の今昔

F氏は長年木造住宅の設計建築を総合的に手掛けてきた超ベテランである。しかし現在の流行は日本伝統を重んずる木造住宅から遠ざかっている。

かつては多くの工員で賑わっていただろうその広い工場を現在はほぼお一人で管理なさっている。掃除だけでも大変な仕事量である。このようなF氏の行動を基底する継続的な情熱はどこから来るのであろうか。F氏は前出の木製のブロックに象徴される様に新しい木材の使い方にも挑戦し続けるチャレンジャーでもある。この頃僕はF氏の情熱に自然と敬服する様になっていた。

普通の製材所や木工所であったら業界違いのイベント屋の言う事にホイホイ乗ろうとは思わない。

F氏曰く

「構造を仮設で使うと言う発想が木工業界になかった。今まで通り家具や建築など単価の分かる商品を作った方が確実であるし、海の物とも山の物ともわからない新規分野に参入する程の冒険をする必要が無いと思う人が殆どなのです。しかし非常識でも新しい事に挑戦して行かなければ木材の仕事はいずれ先細りしてしまう。」

このような考え方が存在する事は知っていたが、その哲学を実践し苦労を積みながらも実直に人生を送る方も本当にいるのだと知った。

【F氏の手掛けた木造家屋】